考える授業(6月27日)
2008年 06月 28日
Aさんは、最近の学校教育が暗記していればいい点が取れるという方法に疑問を抱き、定年までまだ数年を残して早期退職をして理科教育塾を開設しました。この塾は、子どもたちが経験を通して自らの頭で「考える教育」を実施しています。
早期教育の中身は、ひたすら暗記をすることで合格をするわけですが、それでは、それ以後、体験のない教育は伸びていきません。自分の頭で考えることをしていないからです。Aさんのやり方はユニークです。経験を重視し、いろいろな物(100円均一の店で実験に必要なものを買うという、100円均一の常連さんです)を使って実験物を作ります。そして、子ども一人ひとりの顔が見えるように机はスクール方式ではなく、みんなの顔が見えるように円形になっています。
実験後、「なぜ、そうなるのか」、失敗しても「なぜ、失敗したのか」をみんなで考えるのです。常に正解を求める授業ではありません。塾にきている子どもにインタビューをしたら、「学校だと、先生が初めに説明して答えを言うが、ここでは、みんなで考えるのが良い」、「なんでもみんなでやるので、楽しい」などと、イキイキしながら話してくれました。
Aさんが早期退職して塾を始めるに当たって、家族は反対でした。理由は、受験塾ではなく、成績を向上させる塾でもないので、人は集まらない、ということです。しかし、実際に開設してみたら、70名の子どもたちが入塾しました。保護者いわく「とにかく、子どもが楽しみながら、自分で考えることがいいですね」、「ここへ来るのを楽しみにしているので・・・嬉しいです」などという答え。この塾には、不登校などというものは縁がないようです。
自分たちで考え、人の意見や考えも聞きながら「なぜ、そうなるのか」を考えるのですから、授業を効率的に行うことはできません。しかし、この授業は、経験を通して子どもが主体的に学ぶだけでなく副産物として人とのつながりが自然発生的に生まれ、それによりコミュニケーション力が塾へ通うことによって、自然に身につくのではないかと思いました。
Aさんは現在の教育のあり方に疑問を持ち、危機感を感じてこの塾を開設したのですが、その考え方に賛同した親が多かったことに、少し安心しました。これから、この塾がどのように発展していくか楽しみです。
それにしても教頭先生の位置にあったAさんが、経済的な損失をも覚悟の上で、早期退職までして、「考える教育の大切さ」を実践に移さされた勇気に頭がさがります。
▲ by eastwaterY | 2008-06-28 00:16