学びの学校づくり~犬山の教育~(4月29日)
2007年 04月 29日
「犬山の学びの学校づくりの基本的な考え方」については、実際の教育現場で起きていることを検証することなく進めたことに問題点があるとし、そこから犬山の教育を考えようとしています。この資料は2月に作成されているので、もちろんこの度の全国一斉学力調査に関しても、犬山の考えが書かれています。つまり、ゆとり教育により学力低下を引き起こした対応策としての学力テストを批判的に述べています。
要するに、テストでの得点力があったとしても、将来を切り拓く自ら学ぶ力としての具体化が困難であるなど、学力調査から得られる効果よりも危惧される弊害の方が大きいと考えているのです。犬山の教育での「自ら学ぶ力」は、子どもが主体的に取り組む経験であり、そのためには少人数学級であるといいます。実際に今まで犬山市では少人数学級の基で豊かな人間関係と豊かな社会を形成し、「自ら学ぶ力」と「人格の形成」を計ることを実践してきています。
また、基礎学力については「決して教え込まれるものではなく、自ら獲得する」と考えています。教え込まれた知識は単なる知識となるが、自ら獲得した知識は知恵となって生きる力を育むというのです。それでは、学習指導要領に関してはどうなっているか、ということです。犬山では最低基準であるという国の規制緩和を受け止め、教師の手作りの副教本の作成・活用をしています。評価については、日々の授業の中で確認テストや観察などによる継続的な評価を積み重ね、子どもの自己評価や相互評価を基に指導方法を見直し、基礎的な学力の定着を図っています。
そういう犬山の教育を述べた後、「学力調査は本来子どもの学びや教師の指導方法の工夫改善に役立つものでなければならない」としています。では、犬山の「教師の自己改革による主体的に授業改善と学校の自立」については、どのように考え、実践しているか、ということです。
①学校のもっとも重要な役割である「子どもの学び」を保障するために教師は日常の授業を振り返り、継続的に授業改善をつみ重ねて「自己改革」をし、質の高い授業を子どもに提供する努力をしています。
②教師の自己改革を促すためには、教育現場に近いところに裁量を委ね、教育現場に当事者意識を持たせる事により活力と責任感を育て、これが「学校の自立」へとつながるとの事。したがって、教師の自己改革は、学校を内側から変える原動力となり学校の自立が進むとしています。③副教本作りや自主教材作りにより学校独自の教育課程作りを積極的に進めると共に教師自身も自己評価や「同僚性」に基づく相互評価により授業改善を図るとしています。これが教師の指導力向上にもっとも有効な手法だと述べています。
このような犬山の哲学と覚悟は明快で、市町村教育委員会の学校管理権を適切に行使することで、学校経営を全面的に支援し、子どもの学びを保障する責任を全うしています。
学びの環境づくりでは、①意欲を引き出す教育環境の構築、②全時間の6割が授業で、残り4割は授業以外の時間(たてえば、仲間とのコミュニケーションなど)、③学校を地域コミュニティの中心、生涯学習の拠点、としています。学びの学校建築構想の基本は木造・平屋、これらは木の持つ感触と利便性、災害時に危険性が少なくバリアフリーの実現にも適しているということです。
犬山では地域コミュニティに支えられた学びの学校づくりをしています。これは、学校、家庭、地域が一体となって「犬山の子は犬山で育てる」という共通認識を持っているとのこと。そういう考えの基では、生涯学習の観点から「子ども大学」を開催し、学校教育では学習できない体験活動を導入しています。これは私が8年前に会員となった学社融合研究会と同じ視点から子どもの教育を考え、大人と子どもが生涯学習の観点から相互学習をしていることと似ています。学社融合の先進地である千葉県の秋津小学校では、ここ6年間は不登校の子どもは一人もなく、まちぐるみで地域住民が温かな心で子どもたちを見守っているのです。核家族が多い現在、学校と地域が融合しながら教育を行うことは、必要だと思います。
最後に犬山市教育委員会では、教育委員会と学校は相携えて地域の教育を作り出す関係にあると考えると共に地方分権時代における教育行政の原点は、学校の自立を支援するという市町村教育委員会の役割を自覚しているということです。一般的には、教育委員会が学校に対しては上下関係になっており、犬山市のような対等な関係にはなっていないとよく言われます。そのために学校、あるいは学校長に裁量権がないため教師側にはいろいろな悩みを抱えているということです。
このたびの学力テストに唯一犬山市が不参加したのは、今回の資料を読んでみて、犬山市の教育に自信があり、実際に教育効果も出ているからだと思いました。TVで犬山の教育現場を見ると子どもたちがのびのびとしているのが、印象的でした。
▲ by eastwatery | 2007-04-29 22:10