人気ブログランキング | 話題のタグを見る

ワークライフバランス―その2

ワークライフバランスについては、11月24日のブログに「個人が主役の働き方)社会へ」ということ主として書きました。「ワークライフバランス」とは、仕事もプライベートも共に充実させる働き方や生き方を意味しています。その双方があって人生は初めて充実するのです。つまり、働くことに対する報酬はお金だけではありません。家族を抱え、お金を優先したい人もいれば、家族の世話や第二の人生を充実させるために仕事を少し減らしたい人もいるでしょう。

東京工業大学の今田教授は、80年代以降のポストモダン社会において日本人の意識に大きな変化がおきたと述べています。1つは、人々の社会的関心が「物を所有する」ことから自分の生き方を問う、自己実現といった自分の「生き方」を重視する方向に変化して来たのです。人は「心の豊かさ」を求めれば、「生きる意味」をさまざまな形で追い求めるようになり、価値観が多様化してくるのです。もう1つは、緻密な人間関係やコミュニケーション感覚を持つようになり、内面生活を豊かにする時間・機会がほしいということになります。そうなってくると、人への配慮や気遣いを大切にしたいなど、関係性を重視する人が増えてくるということです。

他方で、多くの人に認められ、自分の社会的地位が高くなることを目指すこと、すなわち「達成的地位」にこだわると、家族の崩壊、コミュニケーションの衰退、環境の破壊が起こることを現代社会は証明しています。今、世の中は大きく変化していますが、大沢真知子さんは、その著書『ワークライフワークライフバランス社会へ~個人が主役の働き方』(岩波書店、2006)に、これからの時代は人々それぞれが異なった価値観にしたがって、それぞれの人生を選択して生きる時代になるではないか、と書いています。戦後、日本人は経済発展という1つのゴールに向かって多様な価値観を認め合い、異質なものを排除してきました。しかし、これからの社会は、異なったものが組み合わされて生み出されるダイナミズムが、経済発展させる新しい時代になるであろう、と大沢さんは予測しています。

しかし、そのためには経済の構造や社会制度を変えていくこと、また、人々が「生きる意味」を真剣に考えることが必要だと思います。今は、その転換期の初期に当たると思いますが、今後そのようなワークバランス施策され、人々の意識が変われば、多くの人が仕事と私生活をバランスさせて生きられる、本当の意味の人間らしく生きられる社会になるのではないでしょうか。

今こそ、その実現に向けて大きく社会を転換させる時期に来ているのではないかと思います。

by eastwaterY | 2006-12-09 21:27  

<< スローフード(12月10日) 嬉しいことがありました。よかっ... >>