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性同一性障害について(5月18日)

今日の中国新聞社会面に「性同一性障害と診断の小2 男児、女児として通学」という見出しで、記事がかなり詳細に書かれていました。

心と体の性が一致しない「性同一性障害(GID)」と診断された小2の男児が女児として学校生活を送っていることをテーマとして書かれていました。現在では、GIDの人たちは、2003年に特別法が成立し、性同一性障害者が戸籍の性別を変更することが可能になっています。

男児は、1歳の頃からスカートやぬいぐるみが大好きで、母親は「幼い子の興味の範囲内」と思っていたが、5歳のとき兄と同じ少年野球教室に入れられることを拒絶。ほとんど食事をとらない日が続き、母親が病院に相談したところ、医師から「男女と区別せず、子どもが望むように育ててあげては」とアドヴァイスされました。その一方で祖母が教育関係者に「女児で受け入れてもらえないか」と相談したり、病院で専門的検査と行ってGIDとする診断書を学校に提出。教育委員会や学校側と面接した結果、女児としての異例の受け入れが認められたということです。

入学後は、出席簿、トイレ、身体測定も女児扱いですが、今のところは担任が変わっても
特に混乱はおきていないということです。教育委員会は「医師が『本人が生活しやすいようにしていくことが基本』としたことが決め手となったと説明。「「もし今後、体の性に戻ることがあったとしても対応できるように態勢を整えたい」「医師の意見に耳を傾けながら、子どもの成長を温かく見守っていきたい」と話しているそうです。

これからは、この男児が第二次性徴を迎えたとき、体が男性化していく男児を「同級生やその親がどこまで理解できるかが課題」と専門家は語っています。一方、母親は「できれば普通の女の子として接してほしい」と話しています。このような低学年の児童がこうした形で受け入れられるのは全国的に珍しく今後の対応が注目されるということです。

私はこれを伝えた記事から二つのことを考えました。まず一つ。医師の言葉がいかに、その本人や身近な家族にとって重要かということです。私の場合、息子を早産で産み、その体重が1,850グラムしかなく不安に思っている時でした。未熟児センターの医師が「Eさん、何の心配も要りません。この子は、内臓が非常に丈夫で、今日生まれた7人の子どもの中で一番元気です」といってくださったのです。そのおかげで、それ以後は体重が少なく、しばらくは体格も貧弱でしたが、先生の言葉を信じ、その言葉に励まされ、何の不安もなく普通の子どもと同じように育てることができました。私にとっては、その医師の言葉は「神からの言葉」のように思えました。

次に、この男児は、親にも恵まれていたということです。早めに子どもの異変に気づき、その子にとって何が一番良いかを考えて、子どもを見守り、親としてできるだけのことを子どもにしています。親としては、日本人にありがちな「世間体」を気にすることもなく、ひたすら「その子の幸福な人生」を考えています。同時に学校側もその考えを受け入れ、最大限の努力をしていると考えられます。

これ以後、問題になるのは一般の人々の意識でしょう。母親が「できれば普通の女の子として接してほしい」と話していますが、一般の人々の意識の中に「性同一性障害」に対する正しい理解がなく偏見の目で見られると家族だけで見守ることは難しくなります。そういう意味から言えば、マスコミの役割として、中国新聞がこのことを社会面で一番目立つところに大きく掲載したのは大きな意義があると思います。

以前、私が大学で勤めていたとき、人間教育研究所の一員として学生指導にかかわったことがありました。ある学生が「性同一性障害」を取り上げた新聞記事を読み、性別適合手術を受ける人に対して「親からもらった大事な体に傷をつけるのはもってのほか」という考え方をしていました。それに対して、私は世の中には「男」「女」だけの2種類の人がいるのではなく、性同一性障害の人も含めて8種類の男女がいるということについて学問的な説明をしました。また、人々が彼女のような考えを持つことによって、その人たちの生き方をいかに否定しているか、そのためにそういう人たちが職業差別などを受け、ひとりの人間としても「自分らしく生きること」もできていない現状を訴えました。

それを聴いた学生は、その後の感想に「自分は、いかにそういう人たちの人権を侵していたかということを痛感した。自分の人権感覚が、いかに浅いものであるかが分かったので、このようなことに関する記事には関心を持って読んでいきたい。また、友達にも私の考えを知ってもらい、性同一性障害の人たちへの偏見を持たないように話したいと思っている」と書いてくれました。これは確か2000年頃だったと思いますが、学生がそのように意識を変えていったことが、とても嬉しかったことをこの記事を読んで思い出しました。

このようにマスコミや性同一性障害のことを理解している人たちが、少しでも分かっていない人たちに正確な情報を伝えていくことが、多くの人の偏見を変えていくことにつながると考えます。

by eastwaterY | 2006-05-18 23:40  

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