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クリスマスローズの思い出(3月5日)

 ブログ仲間のIさんと花談義をしていたら、クリスマスローズの花のことを思い出しました。
私がこの花のことを知ったのは、約30年前に2年間住んだニュージーランド(NZ)で油絵教室に通っていたときの事です。

 油絵の先生は、84歳の一人暮らしの女性でした。私は、父が日本画を描いたり、商業デザインをしていたこともあって、いつか自分も油絵をやってみたいと思っていました。でもNZでは、油絵よりも、まず現地の人たちと仲良くなること、NZのちょっと癖のある(オーストラリアほどではありませんが・・・)英語に慣れるためでした。

 一緒に通っていた女性たちとはすぐに仲良くなり、週1回の油絵教室を十分楽しみました。
油絵が初めてということで、先生はまず、花を描く事を私に勧められました。先生は、一人暮らしですが、NZの高齢者がそうであるように、1軒家に住み、周りには庭にクレソンやレタスを植え、潅木があったり、いろいろな花々が植えてありました。

 ティータイムの時には、先生がクラッカーの上にチーズを載せ、その上に裏庭から摘んできた
クレソンをのせたおやつをイングリッシュティーと共に出して下さっていました。

 その先生の庭にあったのがクリスマスローズで、ちょっと緑色がかかった、私にとっては、日本で見たことがない可愛い花でした。他には潅木のように大きく成長した、ホクシャや紫色の野ぼたん(日本でもある茶花です)などがありました。 ある日、先生が、描いていらっしゃるクリスマスローズが、落ち着いた雰囲気の中にも清楚で、その花びらがとても美しく、大好きになりました。
  
 日本に帰国した後、クリスマスローズの花を見ると、いつも先生のことを思い出していました。

 週に1回の油絵教室であっても、近くに行ったときは、ときどき先生のお宅に寄って話をして帰ることもありました。夕方に先生を訪れたら、大変でした。夕方は、誰でも、人恋しくなり、寂しくなるものです。ある程度話して、「じゃあ、かえりますから」というと「Yさん、この花を知っている?ちょっと裏庭へいってみない?」といったり、「日本では、○○は日本語ではどういうの?」とか、
次から次へと話が展開していくのです。だんだん、日が暮れてきます。

 先生の所へは、必ず短時間でも毎日お孫さんやお子さんがこられるのですが、それでもやはり、一人暮らしは、寂しいのです。先生の心情を思うと、あっさり帰るわけにもいかないし・・・・・などと思っていると、いつも真っ暗になって帰宅していました。

 やがて、帰国する日が来たとき、1枚、先生の絵を買って帰ろうということになり、先生宅を夫と一緒に訪ねました。私は、あのクリスマスローズの絵が欲しかったのですが、我が家のリビングに合う絵ということでNZで有名なカウリの木を描いた絵を買って帰りました。

 帰国後も、その絵を見ながら、先生を思い出し、数年間は文通をしていました。そして・・・・・
しばらく、先生からのお便りが途絶えました。

 ある日、先生の娘さんからお手紙をいただきました。「母は、次第にひとり暮らしができなくなり、ホームに入っていましたが、先日亡くなりました。母の遺品を整理していたら、あなたからの手紙が何通も出てきました。生前の母を愛していただき、ありがとうございました」という内容の手紙でした。おそらくもう九十数歳になられていたと思います。

 今も、私が1日のほとんど居るリビングに先生の油絵が飾ってあります。

 もう、30年前の事ですが、今でも先生宅であった油絵教室の柔らかな雰囲気を昨日のように
思い出すこともあるし、そのときの生徒さんとの文通もまだ、続いています。彼女は、現在87歳で先生のそのときの年齢を超えていますが、元気にボランティア活動をしていらっしゃいます。

by eastwaterY | 2006-03-05 19:48  

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