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臨床美術(4月17日)

TVの情報番組で「臨床美術」を老人保健施設で行なっている様子を取材していました。
この施設では“ひろしま臨床美術の会”の人たちが、主に認知症の高齢者を対象として実施しており、お年寄りのイキイキとした楽しそうな様子が映し出されていました。

これまでに「音楽療法」といって、音楽によって認知症の高齢者の状態が良くなるということは、聞いたことがあるし、そのような映像も見たことがありました。しかし、「臨床美術」によって認知症を改善するというのは初めて知りました。

今日の場面では、「サザエを観て絵を描く」ということでしたが、美術の授業のようにデッサンをして色付けをするのではなく、新聞紙を丸めてパッドのようにして、絵の具で色をつけ、画用紙の上にポンポンと思うままに色づけをしていき、最後に筆でその人なりに形を整えていました。

ある高齢女性は、「私のお父さんは漁師だったので、よくサザエと取っていた。それを思い出し、お父さんを思い出してよかった!」と幸せそうでした。臨床美術の会の人たちは、それぞれのお年寄りの傍で、話を聴きながら、ほとんど絵を描くことには手を出さず、「上手、下手ではなく、その人らしさを表わした絵」が出来上がるのを何よりも大切にしていました。これらの絵は、誰でもできるし、その人が描いたことが素晴らしい、という考え方です。

出来上がったら、みんなの作品を壁に貼り、鑑賞会をしました。どれを見ても素晴らしく伸び伸びと明るい色調で描かれていました。形もなんとなくサザエと分かるような感じでした。その後、みんなでそれぞれの絵を認め、褒め合っていました。そのことにより、認知症の人は自分に自信が持てるようになるとの事ですが、これは子育てにも通じるようにも思いました。

“ひろしま臨床美術の会”の代表者は言います。「絵を描くことは脳の認知機能を刺激するので、認知症に効果があるのです。まだ、余り知られていませんが、広島の文化のようなものとして、人々の間に広く深く根付くようにしていきたいです」と。

私の母は、原爆に被爆しながらも92歳まで生きてくれましたが、晩年の3年間くらいは完全に認知症になっていました。我家に来ても「あなたは、私の娘ですか、それともお嫁さんですか?」と尋ねるほどでした。それ以前は、小学生のような日記をかなり長い間、書いていましたが、書かなくなってしまってから、急速に認知症が進んだように思います。

このような楽しい治療法があったら、母ももう少し認知症の進行が遅かったかも知れないと思ったことでした。

by eastwatery | 2008-04-17 20:54  

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