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年収1/2 時代の再就職(8月30日)

現在、野口やよい著『年収1/2 時代の再就職』(2004年)を読んでいます。今日までに全体の2/3くらいまで読んでいます。内容としては、主に女性の再就職を中心として書いてあります。それも文献を参照にした自論やデータを示しながら、過去から現在、それに加えて未来への展望などが書いてあります。それ以外にも著者が実際に約40人に取材した内容も挿入されており、理解しやすくなっています。

DINKS(子どものいない共稼ぎ)、DEWKS(子どものいる共稼ぎ)という言葉は、いまでは多くの人が知っている言葉ですが、この本では、著者が野口さんが名づけた「HIKSカップル」が主役となっています。「HIKSカップル」とは、夫の経済力が弱まって、専業主婦である妻の再就職を必要としている夫婦を名づけたものです。英語で言うと“Half Income with Kids”(子どものいる年収が2分の一になった)夫婦ということです。このように名づけた背景には、野口さんが日本の若い家族の典型は、おそらく、HINKSにより近いと考えたところにあります。

多くの識者が「男性一人が家計を背負うことは、もうできない。妻も夫と共に働く時代だ」といっている、とこの本に書いてありますが、現在紛れもなくこのような傾向は、2004年当時より多くなっていると思います。では、そういう傾向の中で結婚後・出産後仕事をやめた女性たちは、満足をしているか、といえば、多くの女性たちが閉塞感に悩まされ、子どもと夫の面倒をみるだけで一生を終えていいのか、と焦っています。しかし、それだけでなく、主婦が再就職をしようと思ったとき、今ではどうにも経済と切り離せない関係(経済的ファクター)にあるのです。また、妻が働きに出さえすれば、火の車の家計の危機を乗り越えることができるのか、彼女たちの十分な雇用の機会が開かれているのか、ということです。

実際に取材した多くの専業主婦の答は「正社員のままで、結婚・出産後も働き続けていた方が良かったのではないか」ということです。2004年頃からパート労働だけでなく、契約社員、派遣社員がどんどん増えて、どこの会社も正社員の数を少なくしています。男性でも、これらの働き方をする人が増えているのですから、女性には余程の技能・技術があるか、専門職でない限り、一旦切れた正社員登用への道はふさがってしまっています。その上、認定保育所の募集人数は少なく、保育園児の数は主に正社員の子どもであり、それ以外には限られています。

非正社員(契約社員・派遣社員など)の多くは働く期間が決まっている有期間雇用者であって、簡単に職を失いやすいのです。その上、働き方は正社員並みであっても、健康保険、厚生年金もなく、過酷な状況の中で働いているのです。すなわち、「低賃金」、「雇用保障がない」、「出産の権利がない」という3点で女性労働の非正規化が、どんどん進んでいるのです。

つまり、正社員は、コア(核)の社員として、企業にとって本当にかけがえのない人たちだけが正社員の特権を得て、より多くの人たちは雇用保障のない働き方になっているのです。これは、まさに小泉前首相が提唱した「5%のエリートと95%のエリートの手足となって働く人」の世界になってきているのです。このことは、ますます少子高齢化を進めることになり、日本の将来は活力のないものになってしまうのです。それだけでなく、若い世代の生きていく意欲や活力、夢が失われていくのではないかと危惧しています。

安倍首相は、重要な政策の一つとして「再チャレンジ」を挙げています。この中には子育て終了後の専業主婦だった女性が、もう一度仕事を持って家庭生活を営んでいくことができる社会を目指しているのです。この政策は、日本の将来のためにも、この政策に対して本当に真剣に取り組んでほしいと思っています。

by eastwatery | 2007-08-31 01:21  

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