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山田泉著『「いのちの授業」をもう一度』(8月14日)

お盆に入ってお墓参りや親戚回りも終わり、仕事も活動も文書作成が少しあるだけなので、やっと落ち着いて本を読む時間が取れました。以前から山田さんの本を読もうと以前から買っていたので、一気に読みました。

6月、8月とNHKで2回山田さんの「いのちの授業」が放映され、2回とも「心に響く」体験をしブログにもその感想を書きました。その後は、山田さんこと、山ちゃんがブログにコメントを入れてくださったことに感動し、時々コメントの交換をしてます。さらに、参議院議員に立候補され次点だった河野美代子さんの選挙事務所にボランティアとして活動する中で山ちゃんと河野さんがお知り合いだったとことを知りました。そのとき、「人生において何に価値をおいて生きていくか」ということが似ている人とは、こうしてつながっていくことがあるのだと、この縁に不思議さを感じました(山田さんを山ちゃんというのは、生徒たちがそう呼んでいるので、私も親しみを込めて、そう呼ばせていただいています)。

さて、『「いのちの授業」をもう一度』を読んだ感想を書いていきたいと思います。
まず一番感じたことは、山ちゃんのこの授業は「意識を変えていく、生き方を変えていく授業であったということです。私は60歳で入学した大学院で意識変容の研究をしました。その結果、人が意識を変えていくには、第一段階として、自らの考え方を批判的にふり返って客観的に自分を見つめること、第二段階として自らの生き方・あり方を批判的にふり返ることにより、ジレンマを感じながらも、自分の生き方を変えていくということなのです。初めに個人の意識変容が起こり、それがさらに社会的行動の変化に発展していくということです。

その手法は、①自分自身をふり返ったことを文章に書き、自らを客観的にみる、②人と対話をし、他者の価値観や考え方を自分自身の中に取り入れ、新たな価値観や考え方を形成し生き方を変えていく、③そのことにより、さらには社会的な行動変容に移っていくのです。まさに、山ちゃんの授業は、意識変容の授業そのものでした。山ちゃんは、意識変容を考えて授業をされたのではないと思いますが、人間として生徒と対等であるという意識と愛情をもって常に命をかけて、生徒とかかわっていかれました。その素晴らしい基本があったからこそ、個性豊かで、時には問題を抱えた生徒たちも自分自身のことに気づき、心を育て、自分を解放し、他者とつながり、話し合って、最後には自分の考えをしっかりと発表できる生徒になりました。

それだけでなく、たとえば、ハンセン病療養所へ行き、そこで暮らす人から話を聴き、施設を見学しました。その後「調べ学習」をして、「ハンセン病が恐ろしいのではなく、差別する人間の方が恐ろしい」などと差別することの重大さを学習し、自分たちの生き方やあり方を考えました。そして、学習成果を学内で発表したり、福岡市でのシンポジュムに参加するなど、社会的行動にまで至り、多くの人々に大きな影響を与えました。

本を読んでいても随所に「これが中学生が感じ、考えたことか」と思ったり「まるで大学生のレポートのようだ」と思うことがありました。生徒たちは「いのちの授業」を通して、生きること、死ぬこと、差別することなどに対して一つひとつ自分の考えをもつようになり、発表するまでになりました。何よりも感動したのは、山ちゃんが先生という上の位置から生徒に対応せず、時には子どもから学ぶ姿勢があるので、問題を抱えた生徒であろうと徐々に自分を解放することもできるようになったことです。それと共に荒れていた生徒たちも自分の考え方や生き方に気づき、クラス全体が変わっていったのです。

山ちゃんが体の不調のため辞職をすることになり、最後の授業をした時に、「いのちの授業とは何だったか?」の問いかけに生徒から出てきた言葉は次のようなものでした。
「自分を変えるチャンスをつかむ授業」、「生きる意味を考える授業」、「自分自身を見つめ直す授業」、「自分、相手のスバラシサを知る授業」「これからいきていくときに励みになる授業」、「自分の心や考え方を変える授業」など、いろいろとありました。

最後に山ちゃんは永六輔さんの詩を紹介されていました。この詩は、私の叔父が亡くなったとき、遺書のような形でこの詩を残していたものでした。私も自分が講演するときに、よくこの詩を紹介しています。この詩は、今までブログの中で2回紹介していますが、もう一度紹介しましょう。私の生きる基本になっている大好きで、大事にしたい詩です。

生きてゆくということは 誰かに借りをつくること
生きてゆくということは その借りを返してゆくこと
だれかに借りたら 誰かに返そう
だれかに そうしてもらったように
だれかに そうしてあげよう
だれかに そうしてあげよう

生きてゆくということは だれかと手をつなぐこと
生きてゆくということは つないだ手のぬくもりを 忘れないでゆくこと
めぐりあい 愛し合い やがて別れに
その時にくやまないように よく明日を生きよう
人は一人では 生きていけない
人は一人では 歩いてゆけない

私の今一番の希望は「山ちゃんに会って話したいなあ」ということです。

by eastwatery | 2007-08-14 22:49  

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