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愛情と真心 手作り弁当(7月24日)

広島には「夜廻りの会 廿日市」という会があります。代表者は59歳の女性のYさんです。彼女は、13年間毎週土曜日の夜、路上で暮らすホームレスの人たちに手作り弁当を届けていて、この活動を一度も休んでないということです。

彼女は「一人じゃないんよ、おっちゃんらのこと、いつも見ているよ」という思いを伝えたくて、目でも楽しんでもらえるように彩にも気をつけています。この弁当は220人分、すべて彼女一人でで作っています。使う食材は20品目。「1週間に1回のこと。手なんか抜けません。体にええなあと思うと、うれしゅうて、うれしゅうて」と彼女は言います。

Yさんは、家庭の事情で親戚の家を転々とし、中学の3年間は児童養護施設で暮らし、このときに200人分の食事作りをしたとのこと。今、弁当作りをするときに、この時の経験が大いに役立っているそうです。戦後の混乱期、「毎日、まっとうに食事をいただけることは夢のようだった」という体験が、「おっちゃんらにも幸せのおすそ分けをしたい。」という気持ちとなり活動の原点なのです。

ホームレスの人たちを「働かない怠け者」といい、世間の目は厳しいのです。しかし、Yさんは「違う。路上で暮らす多くの人々は懸命に実直に働いてきた人たち。」バブル崩壊以降、働く環境は、めまぐるしく変わり、いろいろな人が路上にはじき出されてきました。「今の世の中、足の引っ張り合い。でもおっちゃんらは違う。助け合って生きている」とYさんは言います。こういうYさんに対して夫のKさんは努力を惜しまず、夜回りの時には車を運転し、広島の13箇所を廻っています。彼いわく「ボクは女房を尊敬しています。困っている人を見たら、ボクならどうしようと思うが、女房は突っ走っていく。」家計からの持ち出しも多いが、「女房が輝いてくれれば、いいんです」とKさんは言います。

もちろん、この13年間多くの人たちからの温かい支援がありました。旬の野菜や米、衣類や家庭用品・・・などなど。現在協力者は広島以外、東京と、長野県などにも広がっています。
私も一度、活動発表会場で彼女の実践発表を聴き、彼女が望んでいたTシャツ、タオル、セーターのほか、気持ちとして2,000円入れた箱を宅配便で送ったことがあります。すぐに返信の手紙が来て、「原則としては、私はお金を頂くことはしていません。しかし、今回は、お心としていただき、靴下を買わせていただきます」と言う手紙が添えられており、同時にカラフルなお弁当がずらりと並んだ写真が同封されていました。気軽に小額といえどもお金を入れたことは、少し彼女の心を傷つけてしまったようで、申し訳ないと思いました。

彼女は3年前に膠原病を発病し、今は無理の聞かない体になっているといいます。しかし、Yさんは「おっちゃんが待っている。やめられへん。いけるところまで、いくしかないねん」と白髪の穏やかな顔で答えます。ホームレスの人たちにとって「一人でも温かい気持ちで自分たちを見守ってくれている人がいる」ということが、どれだけ彼らの生きる意欲を引き出しているか。
マザーテレサは「愛情の反対は憎しみではありません。無関心です」といっておられます。

ここ数年、労働環境は厳しくなり、格差はますます広がっています。「勝ち組み、負け組み」という言葉が、マスコミでも取り上げられ、話題にはなりますが、その格差をどのように解決していくかという施策は考えられていません。その間にも若い世代では、アルバイトをしながら泊まる所もなく、インターネットカフェで仮眠をする人が増えています。このような形の働き方が増えてくると、彼らは、やがてはホームレスへの道をたどっていくことになります。

日本全国、どこでもYさんのような人がいるわけではありません。29日には参議院選挙が行われます。今回の大きな問題点は、年金ですが、それだけでなく経済格差が進む現状を解決していく施策を提示していくべきだと思います。

by eastwatery | 2007-07-24 22:37  

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