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社会人学生の卒業式(3月15日)

今日は、2年前に社会人学生として短大の食物栄養学科に入学したAさん(58歳)の卒業式でした。保護者(?)として、卒業式に出席してきました。この短大は小規模ですが、社会人学生には大きく門戸を開いています。入学試験などは社会人の場合、その人の都合に合わせて一人でも行う、キャンパスは副学長が詳細な説明をしながら案内をするという具合です。もちろん、経営上のこともありますが、今日の卒業式を見ても、心込めて卒業生を送るという様子がみえました。

2年半前、Aさんは「長い間専業主婦をしていたが、子育ても卒業したし、かねてから『食』に興味・関心があるので、食物栄養学科に入学したい」と学習相談にこられました。そのときは、「良妻賢母」というタイプの人でした。堅実でしっかりと家庭経営をしてきた人でした。しかし、長い間、彼女は学習から遠ざかっていたので、果たして入学できるのか、案じていました。

それならば、ということになり直ぐに入試に必要な「小論文」対策の学習支援を始めました。初めは、新聞社説を800字にまとめる→600字にまとめる、を繰り返し、それができるようになったら、過去問を基としてキーワード5個を使って800字の小論文を書く。最後は600字の小論文を書く、それ以後は、面接対策に移りました。彼女は、1日も休まず、私が添削して送ると夜中であっても次の課題を作成して送る、というように意欲的で熱心な学習者でした。

初めに学習するときは、お連れ合いには内緒だったので、「主人が会社から帰宅すると急いで勉強道具を片付けている」とAさんは言われました。私は「いくら、あなたが隠しても、その時の雰囲気は残っているのだから、自分の考えと大学進学をしたいことをはっきり話しわかってもらうようにお連れ合いに話すように。あなたは、悪いことをしているのではないのだから、コソコソすることはないのよ」と言いました。その後、お連れ合いに話したら、理解をしてくださったとのこと。女性、特に彼女のように「良妻賢母」の人ほど、「女性の生き方」と「自分らしく生きる」との間で悩むと言うことは、よくあります。

彼女が入学して1ヶ月たった頃、キャンパス報告に来てくれました。驚きました!彼女は黒いスーツをピシッと着て、背骨はまっすぐに伸び、動作は俊敏、目はきらきらと輝いていました。まるで別人でした。こんなにも、自分の夢を実現すると変わるのか、と思いました。その頃のお連れ合いは彼女のことを「学生さん」と呼び、彼女が数学の問題などで苦労していると「学生さん、大変だったら、いつ止めてもいいんだよ。体を壊したらいけないからね」と案じながら、彼女の学習に応援の姿勢を示されるようになったということでした。それからの約2年間。時々、彼女は、今どのような学生生活を送っているかを知らせてくれていました。若い学生とも仲良くし、調理実習などは好きなので楽しいことなどなど。

そして、今日。 なんとAさんは、食物栄養学科の総代として卒業証書を受け取りに出られました。最近の女子学生のように着物(ピンク)と袴姿の出で立ちで、立派に総代を務めました。

卒業式後、彼女と写真を撮り、少しだけ話をしました。彼女はこう言ってくれました。「私が入学試験を受けるために、厳しく小論文を指導してもらったおかげで、大学ではいつもどの先生からもレポートが良く書けていると言われました。成績は一つの教科を除いて、後はAでした。」そういえば、彼女が書いた初め頃の小論文は、真っ赤になるほど添削しました。彼女は、その覚悟はしていたようですが、ちょっと驚いたようでした。でも、すごいがんばりで、瞬く間に赤字の部分は、減っていきました。

彼女は短大卒業後、3年間実習を兼ねた仕事をしながら国家資格の管理栄養士の資格を取ることを目指しています。Aさんは、絶対と言っていいほど、夢を実現をすることでしょう。面白いことに彼女の大学進学は、お連れ合いに大きな影響を与えていました。お連れ合いは退職後、起業をした今、いろいろな資格を取るために彼女と一緒に家で学習をしておられるそうです。二人の自立した娘さんと息子さんは「友人など、親が病弱だったり入院したりで大変なのに、我が家は両親とも元気でありがたい」とよろこんでいらっしゃるそうです。

今日も「良かった、良かった」の話でした。

by eastwatery | 2007-03-16 00:31  

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