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日系アメリカ人リーダーシップ・シンポジュウム(3月9日)

国際交流基金日米センターは、全米日系人博物館と共催で、2003年から毎年「日系アメリカ人リーダーシップ・シンポジュウム」を実施しています。今日は、広島県などの後援を得て、広島平和記念資料館で、このシンポジュウムが行われました。コーディネーターは、日本側が広島大学の教授(男性)、日系アメリカ側が全米日系人博物館館長(女性)、パネリストは、ある州の郡運輸局長(男性)、学校教師(女性)、ある郡公立学校委員会事務局長(女性)で、すべて日系アメリカ人でした。

過去のシンポジュウムでは、日系人コミュニティからみた現代アメリカ社会と市民活動、アジア系アメリカ人の多様性、多文化共生実現への道、多様な職業を通じた日系アメリカ人の貢献といったテーマで、日系人リーダーたちの活躍を紹介してきたようです。今年は標記のテーマで,現在の日系アメリカ人の職業、ライフスタイルなどの多様性は日系人たちの過去の歴史を反映しているというところから始まりました。

日系アメリカ人の歴史は、重大な岐路の連続でした。移民として「日本を離れること」の選択、移住先の選択、戦争時の母国をめぐる選択、収容所での選択、戦後の再定住地の選択など、岐路にたった一世・二世の選択と生き方が今日の三世・四世の多様性を生み出したということでした。現在、アメリカの新世代は、自分たちのキャリアや結婚を通じて、日系人であることのアイデンティティ問題に直面しており、現在もまた、大きな岐路に立っています。Aさんは、アメリカでシアトルにある二世が立ち上げた「日系コンサーンズ」の高齢者ホームにかかわっていますが、三世・四世は多様な家族、他の人種との交流により日系社会から離れている上、彼らの価値観に変化があるため、組織を改変していく必要があると言っておられました。

学校の教師をしているBさんは、1964年東京オリンピックが開催された年に、ある町を訪れ「Jap Road」と名のついた道路があるのを知りました。そのときには自分にとっての岐路であったと語りました。その思いを抱えて、ついに2002年「Jap」と言う侮辱的な名前の道路を変えたいと嘆願書を集める運動をした結果、運輸省・住宅開発省が、その名前を変更することを承諾したと、その経緯を話されました。この活動を通じて彼女が思ったことを、教師として常に生徒に次のようなことを伝えているそうです。①人脈、ネットワーク、善意を持って多くの人とかかわること、②自分が良いと強く信じて立ち上がれば、よりよい人間になれる、③アメリカは人種のモザイクであるが、対話をしてみると、みんな共通の目標があることが分かる。それは、「平和の実現」であると言うこと。彼女は、祖父母、父母がアメリカ社会で侮辱されたことを知っており、その話をするときにはコーディネーターの日系アメリカ女性も涙を拭いていました。彼女たちの親は、第二次大戦中、強制収用所に入れられ、何の発言もできず、人生を奪われたのだと言われました。

最後の学校委員会事務局長のCさんは、自分自身が今、日系アメリカ人として岐路に立っていると言われました。と言うのは、「成長する中で家の中だけの文化を受け継いできたために、社会へ出ると外観だけで部外者と思われる。しかし、自分には両親から受け継いだ文化があり、日本人としての特徴を隠すことはないと思っている。二人の娘には日本の伝統文化を受け継ぐことはできる」と、日本人としての誇りはしっかりと持っておられました。

平和教育については、子どもたちには「自分は、人にどのように扱ってもらいたいのか」ということを考えて人に対応するように教えているとのこと。戦争の悲劇について生徒に話し、世界にはいろいろな人がいる、と言っているとのこと。意外だったのは、授業の中でアジア系アメリカ人については、あまり教えられていないので、原爆、広島のことなどについても子どもたちは知らないと言うことでした。これは、アメリカにまだ人種差別の感覚が残っているということかもしれません。

最後にコーディネーターのDさんが、「日本に対するイメージは第二次大戦以後、変わった。イメージは主にテレビ、本、新聞などから得られているが、アニメなど、日本から学びたいと思っている人が多く、年々日本のイメージは変化している」とのことでした。書けば切りがないほどの内容のシンポジュウムでした。

日系アメリカ人は、これからどのように生きていくのでしょうか。 新世代の日系アメリカ人は、日本とどのような関係をつくりあげていくのでしょうか? 移民後、一世・二世が死ぬ思いをしながら日系社会を形成していったことを三世・四世の人たちは忘れず、それに敬意を払って、日本のいい点も取り入れながら日米両国の平和に貢献する人になっていただきたいと思いました。
同時に、私たち日本人も、日系アメリカ人の思いや苦悩も汲みながら生きていくことが求められていると思いました。

by eastwatery | 2007-03-10 02:03  

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