中島誠之助さんと母親(1月28日)

日曜日の午後6時半から放映されている「グレートマザー物語」のファンで、何かの行事で観られない時を除いて、たいていこの番組は楽しみにして観ています。有名人の母親がどのようにその人に影響を与えたか、母親の言動を思い出しながら、有名人が自分の人生をふり返るのがこの番組の特徴です。

今日は、「開運なんでも鑑定団」の審査員の中でも主に陶磁器の鑑定を担当していらっしゃる中島誠之助さんの「グレートマザー物語」でした。彼は、養母にこれ以上ないと思うほど愛情を持って育てられましたが、その事実を彼が知ったのは8歳のときでした。それまでは実母だと思っていた養母が、実父母は彼が幼い時に亡くなっていることを告げたのですが、養母が自分をとても愛していることが分かっていたので、その事実にショックを受けることはありませんでした。やがて、生活の困窮時代となり、養母は叔父の別荘に彼を置いて上京し時々しか帰ってこない日々が続きました。周りの人の言動から養母は売春婦(その当時はパンパンといっていました)をして、彼と自分との生活費を捻出していたことを知りました。しかし、そのことをいくら周りの人が悪く言おうと、中島さんは幼いながらも、「そのようなことをしてまで、自分を養ってくれている」と思い、養母のことを悪く思うことはなかったとのこと。本当に母親が自分を愛してくれているということを幼いときから感じていれば、しっかり母子との間に信頼関係ができ、自己肯定感があるので、母親の職業のことで母を恨むということはなかったのです。また、現在、こうして有名になっても、その事実を堂々とTVで話す中島さんを見て、頭の下がる思いがしました。

ある日、骨董商を営んでいる叔父の別荘を売るということになり、その別荘から出るときに、彼は叔父の荷物を積んだトラックに飛び乗り、叔父の家に行くことをわずか10歳で決意したのです。「そのときに私は養母を捨てたのです。そしてそれ以後、母は私の前から姿を消し、長い間行方不明の状態が続いたのです」と語られました。それ以後、彼は叔父に受け入れてもらい、学校にも行かせてもらいましたが、叔父たちからは彼に何の関心も寄せられず、ほめられもせず日々を送ったということで、要するに叔父の家では彼の存在感は、なかったということです。

その後、中島さんは骨董商になるべく叔父に弟子入りをし、厳しい修行を積み、昭和51年に自分の店を持って技を磨きつつ商売を続けているうちにマスコミなどにも取り上げられるようになりました。そういう日々を過ごしていたある日、美術家の一人から、ある老人ホームで中島さんの作品集や新聞記事を丁寧に収集している人がいると聞いたので、その老人ホームを訪ねました。そのとき養母は80歳を過ぎていましたが、以前と同じように背骨をきちんと伸ばした姿勢で凛とした態度だったそうです。中島さんが自分のことを言っても、「自分はそうではない、知らない」と言い張り、彼の養母であるということを
明かそうとはしなかったといいます。だから、中島さんは「自分はもう商売にも成功し、結婚もし、お金もあるし、何の不自由もない生活をしているのだから心配はないのだ」と切々と養母に話した後、やっと自分が彼の養母だということを彼女は明かしたということです。養母は、自分が中島さんの養母だと分かると彼に迷惑をかけると思い、自分のことを明かそうとはしなかったのです。何十年ぶりの再会ですから、さぞ嬉しかったと思うのに、強く彼を愛しているために養母は、そういう行動をとったものと思われます。

その後2年間、中島さんは養母が住んでいる老人ホームをたびたび訪ねてましたが、2年後には逝去されたとのこと。そして、養母の荷物の整理をしているときにノートが出てきました。そこには、自分が中島さんと責任を持って育てることができなかった後悔と彼に対する懺悔の気持ちが切々と何冊ものノートに書かれていたということです。何十年も彼と会うこともなく、また、そのときは彼と再会できることも不明なのに、とても丁寧な字で書かれていました。

私は、「開運なんでも鑑定団」を観る時、いつも中島さんは、きっとお金持ちの骨董商の息子として大事に育てられた人なのだろうと思い、温かな家庭で愛されて育った人が持つ優しさを感じていました。しかし、彼の波瀾万丈の生活を聞き、彼の優しさは苦労を肥やしとして人への思いやりを持つ人になられたということを知りました。そして、その人間性は、物心のつかない時から徹底的に養母から愛されて育ったことに基礎があるのだと思いました。自己の存在感がないほど無視された生活の中でも、ぐれもせず耐えて成長できたのも、「養母の愛」がその基盤になっていたのでした。つくづく、いかに誕生以来、「親から愛された」という実感を持って生きることが重要かということを改めて考えさせられた番組でした。
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by eastwaterY | 2007-01-28 23:01  

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