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鉛筆がブーム?(11月15日)

絶滅寸前だった筆記用具が、折からの『えんぴつで奥の細道』ブームに乗って、息を吹き返しているということです。『AERA No.53』(11月11号)に鉛筆のブームの様子と鉛筆による、たくさんの効用が掲載されていました。

実は、この記事を読むまでもなく、最近私もシャープペンシルより鉛筆の感触が好きで、いつの間にかシャープペンシルより鉛筆を使っていることに気づいていました。何が良いかというと、まず、手に持って握って書く時の木の感触が、たまらなく良いのです。温かく柔らかな感じがするのです。電話相談の時も必ず鉛筆で書きます。電話相談の場合は、1件ずつほとんどA41枚にびっしり内容を書くことが多いので、どんどん鉛筆の芯は減ってしまいます。そうするうちに芯が丸いものばかりになるので、鉛筆削りで何本かを削ります。これは、本当は、ナイフで1本1本削る方がいいのです。時間の流れが緩やかになるからです。その「緩やかな時間の流れ」の間に、無心に鉛筆を削る方が、気持ちの建て直しになったりすると思うのです。

ということで、私はなんとなく鉛筆を使っていて、鉛筆が好きなのです。では、『AERA』には、その効用はどのように書いてあるのでしょうか?

コラムニストの中野翠さんは、パソコンを使わず、ずっと2Bの鉛筆で執筆しているとのこと。パソコンでの執筆は便利であっても、それは自分の能力を削るような気がするそうです。『えんぴつで奥の細道』で鉛筆で字をなぞった人たちは「鉛筆でなぞるだけで、丁寧に生きている気がする」「鉛筆で書くのは気持ちがいい」という感想を寄せているということです。精神科医の名越康文さんは「記憶は本来、頭ではなく”物“に残るもの。鉛筆にも、同じようにノスタルジーを感じる。他の筆記と違い”身体に”しなう”感覚があり、それが心地よさを感じる一因。その「心地よさ」を脳や身体が喜ぶ」といっておられます。

『フリーマガジン』の編集長の小林惇一さんも鉛筆で書く「心地よさ」を感じている一人で、このように言っています。「ペンで書いて間違えると、そこで思考が止まるような気がする。間違えた部分がそのままになるのも気持ちが悪い。でも鉛筆は、間違いを消すことで思考を仕切り直しできる(略)。鉛筆の方が文字をきれいに書ける。きれいに書けると発想が膨らみアイディアが湧いて来る。いつでもとがった芯で書けるという気持ちの余裕もいい」。

これらの人たちの感想やコメントを読んでいて、なぜ、私が鉛筆が好きなのかが、分かったような気がします。特に、最近になって鉛筆の良さに気づき、好きになったのかも分かります。それは電話相談で、鉛筆だけを使うことでその良さに気づいたこと、年齢を重ねて自分の思考や動作が緩やかになったことが、私にゆったりとした時間を持つことの良さを気づかせてもらったのだと思いました。昔からよくお年寄りが「年齢(とし)を取るほど、あっという間に1日が過ぎていく」といっておられました。その時に「若い人ほど、急ぐ仕事やあわただしい時間を過ごしていないお年寄りが、なぜそのように思うのか」といつも思っていました。
でも、実際に自分が年齢を重ねてみて、その意味が良く分かります。夫と会話をしていても、正確な判断をするにもお互いに意味がとれなく、時間がかかります。また、自分では、きちんややったつもりが、そうでもなくやり直したりすることもあります。外出の準備にしても、最近「以前は、こんなに時間をとっていなかったのに・・・・」と思うことが良くあります。

そのように少しずつ自分の思考や動作が緩やかになっているので、今まで気づかなかった鉛筆の効用に気づくことになったのですね。そういう自分を嘆くのではなく「ありのまま」で受容しようと思います。

by eastwaterY | 2006-11-15 20:44  

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